電力
電力供給の概況
カンボジアでは電力は下記の機関によって発電および配電が行われています。
- 国営企業であるEDC(Electricite du Cambodge)
- 省都における独立系電力事業者(Independent Power Producers:IPP)を含む民間業者
- 小都市における小規模認可業者
- 農村部における地方電気事業者(Rural Electricity Enterprises:REE)
EDC はプノンペン、シハヌークビル、コンポンチャム、タケオ、バッタンバン、シェムリアップ、ボンテイミチャイ、カンポット、カンポンスプー、ステントレン、 スヴァイリエン、プレイベン、ラタナキリ(バンルン)における発電・配電・送電の複合事業認可を持っており、2005年現在国内の電力供給の26.5%を 担っています。一方71.1%の電力供給はIPPによるもので、2.4%が複合認可業者100社によるものです。
南 部地域ではベトナムからの電力購入契約(Power Purchase Agreement:PPA)が調印され、またプノンペンからタケオを経由してベトナムへ至る送電線敷設に向けた、カンボジア政府と世界銀行・アジア開発 銀行との融資契約も調印を終えています。これによりカンボジアは、最初の2年間では80メガワット、3年目以降は200メガワットの電力をベトナムから輸 入することになります(いつから?)。またドイツのKfWとも、タケオからカンポットにいたる送電線に対する借款契約が結ばれています。
北 部地域ではタイからの電力輸入に向けた電力購入契約が調印され、タイ国境から3つの州都への送電線敷設に向けASK社との間で投資合意が調印されていま す。これにより、タイからの大規模な電力輸入は2007年までに開始される見通しである。バッタンバン、シハヌークビル、カンポット、カンポンスプーから 周辺40キロ以内の地域への中圧送電線網の延長は世銀からの融資により建設される予定です。
残 念ながら、電力供給はまだ需要を満たしておらず、この状況は農村部では24時間電力供給が確保されていないなど、特に顕著で、電力の質も安定していませ ん。現在計画中の送電線網敷設およびカムチャイ(Kamchay)水力発電所(193.2MW)が完成すれば、電力の安定供給が実現することが期待されて いますが、カンボジアでは今後も需要の増加が見込まれています。カンボジア政府の中期計画では、潜在的に有望な全ての水力発電所を開発し、またより規模の 大きい石炭・ガス発電所に供給源を広げることにより、高価な重油への依存度を減らし、電力コストの低減をはかる計画です。
通信
通信サービス
カンボジアには固定電話会社が3社、国際電話会社3社、携帯電話会社4社があり、各社のサービス内容は下表のとおりです。
表 3-10 電話会社とサービス内容
会社名 | 固定電話 | 携帯電話 | 国際電話 | インターネット |
Telecom Cambodia (023) |
X | X |
X (CamNet) |
|
Camintel |
X | X | ||
Camshin (Cambodia Shinawatra) |
X | X (011) | X | |
CamGSM (Mobitel) |
X (012) |
X (Tele2) |
X (Telesurf) |
|
CASACOM (Cambodia Samart Communication |
X (015 / 016) |
X | ||
CamTel |
X (018) |
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3tel Cafe (008) |
X (PC-to-Phone) |
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Cogetel |
X (Online) |
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Open Forum |
X |
インターネットサービス
現在のところインターネット接続業者ISPは、CamNet、Bigpond(CogeTel)、Open Forum、CaminTel、Telesurf、Camshin、CASACOMの7社があります。プノンペンではADSL、無線サービス、光ファイ バーも利用可能です。
国際インターネット接続(International Internet Exchange:IIX)もしくはインターネットプロトコール・ゲートウェイ(IP Gateway)はカムネットにより運営されており、回線容量は22Mbpsでです。IPゲートウェイは衛星回線によりTHAICOMゲートウェイか JCSATに接続され、さらに香港のインターネット・バックボーンに接続しています。
光 ファイバーはポイペト – バッタンバン – プノンペン – バベットを経由するタイ・ベトナム間のラインが敷設されています。国際協力銀行(JBIC)とカンボジア政府の間で「メコン地域通信基幹ネットワーク整備 事業(カンボジア成長回廊)」が2005年に調印され、カンポンチャム、プノンペン、シハヌークビル間の400キロをつなぐ光ファイバー敷設事業も始めら れています。
水資源
水 資源開発および管理は水資源気象省(Ministry of Water Resource and Meteorology)の所管です。プノンペンでは、公営企業の「プノンペン水道公社(Phnom Penh Water Supply Authority:PPWSA)が1996年より水道事業を担っています。その他の地域では、水資源気象省が都市部における水供給に対して基本的な責任 を負うものの、多くの場合、民間会社に商業ベースの水供給の許認可を出しています。シハヌークビルではシアヌークビル水道公社 (Sihanoukville Water Supply Authority)が市内への水供給を行ってますが、周辺の農村部においては地下水、河川、雨水に頼っている状況です。カンボジアの年間平均降水量は約 4,000mmですが、雨季と乾季の差が大きく、さらに灌漑システムが不完全なため、安定した農業用水供給に困難があります。
航空
航 空便開放政策(Open Air Policy)により、カンボジアに乗り入れる航空会社の数は近年着実に増えています。8カ国・地域内の9都市へのノンストップ国際線がプノンペン国際空 港から運用されています。またシェムリアップ空港からも国際線が発着しています。
コンポンソム(シハヌークビル)空港も近い将来空路を再開する見込みで、またプノンペンの北、5号線の近くに位置するコンポンチェナン空港も再開準備を始めています。コーコン空港は現在使用されていません。
道路
カンボジアにおける道路網の現状
カンボジアの道路網は総延長約30,268kmであり、その内国道が4,695km(一桁番号の国道:2,052km、二桁番号の国道:2,643km)です。現状では高速道路は存在しません。
現在のところ表3-14とおり、アジア・ハイウェイ、アセアン・ハイウェイ、大メコン圏(GMS)道路の三つのカンボジア領内を通る国際ハイウェイが計画されています。
表 3-14 国際ハイウェイ・ルート
ルート | 大メコン圏(GMS)道路 | アジア・ ハイウェイ | アセアン・ハイウェイ | カンボジア国道 | 全長 (km) |
Poipet Sisophon – Phnom Penh Bavet |
中央 | AH1 | AH1 | NR1, NR5 | 572.4 |
Sihanoukville Phnom Penh Kampong Cham Stung Treng Trapengkreal |
内陸回廊 | AH11 | AH11 | NR4, NR6, NR7 | 755.0 |
Cham Yeam Koh Kong Phum Daung Bridge Sre Ambel Chamkar Luong |
南部海岸 | – | AH123 | NR48, NR3, NR33 | 163.3 |
Siem Reap Preah Vihear Stung Treng Rattanak Kiri O Yadav Border |
北部 | – | – | NR66, NR78 | 464.9 |
合計(km) | 1,955.6 |
出所:進捗報告書、JICAカンボジア道路網開発調査
多くの国際ドナーの支援により、現在でも道路網の回復工事が進行中です。 2008年までには国道1号線〜7号線の回復及び改善工事の98%が終了する見込みで、最後に残る国道1号線の残存一部区間の改善工事も2010年までに終わる予定です。
カンボジアでは、プノンペンから出発する北線(386km)と南線(264km)の二つの鉄道路線が運行されています。プノンペンへの上り列車は主に発電用の重油、セメント、米を運び、シハヌークビルへの下り線では木材、石を運搬しています。
アジア開発銀行は「カンボジア鉄道復興調査(The Study for the Rehabilitation of the Railway in Cambodia)」を実施しており、2,000万米ドルの予算で3年以内に鉄道改良を行ない、最高速度を時速50kmに引き上げることを目指していま す。
港湾
カ ンボジアではシハヌークビルが唯一の深水港です。同港では第一期のコンテナヤード拡張工事が終わり、ヤードが240m延長されています。現在2期として バースの160m延長工事が実施されています。シハヌークビル港公社(Port Authority of Sihanoukville:PAS)によると、同港のコンテナの処理量は2001年から継続的に増加し、2005年には20万TEUを超えています。
シハヌークビル港公社の情報によると、現在シハヌークビル港は米国、EU,中国、香港、インドネシア、日本、マレイシア、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ、ベトナム等への航路と有しているが、その多くはシンガポールでの積み替えが必要である。
シハヌークビル港のコンテナ・ヤードの停泊施設は次のとおりである。
- 第1期(完成済み):埠頭延長240m(7番バース)舷側水深:マイナス9メーター(喫水8.3メーター以下の船舶が停泊可能)
- 第2期(2007年初頭に完成予定):埠頭延長160m、舷側水深:マイナス9メーター(喫水8.3メーター以下の船舶が停泊可能)
内陸水運
カンボジアの内陸水運網は主にメコン川、トンレサップ(Tonle Sap)川、バザック(Bassac)川からなっていて、総延長は、雨季においては約1,750kmですが、乾季には船が通行できる距離は580kmに減少します。
カンボジアには以下の7つの主要内陸港があります。
- プノンペン港
- カンポンチャム港:プノンペンからメコン主流の上流105km
- クラテイエ(Kratie)港:カンポンチャムからメコン主流の上流115km
- スタントレン(Stung Treng)港:クラテイエからメコン主流の上流150km
- ニークロアン(Neak Loeang)港:プノンペンからメコン主流の下流60km
- カンポンチュナン(Kampong Chunang)港:プノンペンからトンレサップ川上流90km
- チョンクニア(Chong Khneas)(シェムリアップ)港:カンポンチュナンからトンレサップ川上流190km
プ ノンペンとカンポンチャム間のコンテナ運送はゴムに限って行なわれている。乾季においては、カンポンチャムから上流のメコン川とトンレサップ川は水位が下 がるため船の運航には適さない。乾季と雨季の水位の差は時には10mに達するため、カンボジアの内陸水運は避けがたい限界を抱えていると言える。