1. 電力供給の概況
2001年2月に電力セクターの規制のために電力法(The Electricity Law)が公布され、電力供給事業に関する監督・調整を行なう法的組織としてカンボジア電力公社 (Electricity Authority of Cambodia:EAC)が設立された。
カンボジアの電力供給開発戦略は、大規模な発電施設を建設し、また発電所建設期間中は近隣諸国から電力を輸入するために、南部と西部地域[1]の大都市間に送電線を建設することから成っている。
カンボジアでは電力は下記の機関によって発電及び配電が行われている。
- 国営企業であるEDC(Electricite du Cambodge)
- 州都における独立系電力事業者(Independent Power Producers:IPP)を含む民間業者
- 小都市における小規模認可業者
- 農村部における地方電気事業者(Rural Electricity Enterprises:REE)
EDCはプノンペン、カンダール、及び12の州都(シハヌークビル、コンポンチャム、タケオ、バッタンバン、シェムリアップ、ボンテイミチャイ、カンポット、カンポンスプー、ステントレン、スヴァイリエン、プレイベン、ラタナキリ)とベトナム国境の4地域(バベット、メモット、ポンヘクレック、カンポン・トラク)における発電・配電・送電の複合事業認可を受けている。
カンボジアの電力供給は基礎的な需要を満たしておらず、地方では依然として24時間供給は保証されておらず、またその品質も信頼性に欠けるのが現状である。2007年のカンボジア電力開発計画によると、電力需要は2020年まで急速な増加を辿ると予想されている。カンボジアの将来電力需要は表4-2-1に示す通りである。
表4-2-1 電力需要予想 (MW)
2012 |
2015 |
2018 |
2020 |
1,062 |
1,643 |
2,283 |
2,770 |
出所:鉱工業・エネルギー省
現状ではカンボジアの全所帯の22.7%(都市部では54%、農村部では13%)で電力使用が可能である。EDCは2020年までに全ての村で、また2030年までにはその他の農村地帯においても70%の地域に電力を供給する計画である。
増加する需要を賄うため、カンボジア政府は2008年から2021年に至る電力開発計画を策定済みである。電源の拡大に伴い送電線も建設中であり、また近隣諸国からも電力を輸入している。
2. 電力資源拡張
電力資源拡張に関して、鉱工業・エネルギー省のエネルギー開発局は2020年までの電力供給開発計画を策定しており、下表にあるように、8つの水力発電所、3つの火力発電所が2020年までに完成予定となっている。これに輸入電力を加えると最大3,576MWの供給が可能となる見込みである。
電力供給源拡張計画
番号 |
プロジェクト |
供給国 |
発電方法 |
発電量 (MW) |
操業開始年 |
1 |
Kamchay Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
193 |
2011 |
2 |
Kirirom III Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
18 |
2012 |
3 |
200MW Coal Power Plant in Sihanoukville (I) (Phase 1) |
マレーシア、カンボジア |
火力 |
100 |
2013 |
4 |
Stung Atay Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
120 |
2013 |
5 |
Stung Tatay Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
246 |
2013-2014 |
6 |
Lower Stung Russey Chhrum Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
338 |
2013 |
7 |
700MW Coal Power Plant in Sihanoukville(II) (Phase 1) |
– |
火力 |
100 |
2014 |
8 |
700MW Coal Power Plant in Sihanoukville(II) (Phase 2) |
– |
火力 |
100 |
2015 |
9 |
700MW Coal Power Plant in Sihanoukville(II) (Phase 3) |
– |
火力 |
100 |
2016 |
10 |
200MW Coal Power Plant in Sihanoukville(I) (Phase 2) |
マレーシア、カンボジア |
火力 |
135 |
2017 |
11 |
Lower Se San II & Lower Sre Pok II |
ベトナム |
水力 |
400 |
2017 |
12 |
700MW Coal Power Plant in Sihanoukville(II) (Phase 4) |
– |
火力 |
100 |
2017 |
13 |
Stung Chhay Areng Hydro Poer Plant |
中国 |
水力 |
108 |
2017 |
14 |
700MW Coal Power Plant in Sihanoukville(II) (Phase 5) |
– |
火力 |
100 |
2018 |
15 |
Lower Sre Pok III + IV Hydeo Power Plant |
– |
水力 |
368 |
2018 |
16 |
Add 700MW Coal Power Plant at Offshore |
– |
火力 |
200 |
2019 |
17 |
Sambor Hydro Power Plant |
中国 |
水力 |
450 |
2019 |
18 |
Coal Power Plant (III) or Gas Power Pant |
– |
石炭・天然ガス |
400 |
2020 |
Total |
3,576 |
出所:鉱工業・エネルギー省
鉱工業・エネルギー省によれば、下表に示すように、タイとベトナムからの電力輸入のための送電線建設は2012年に完成が予定されており、この結果カンボジアのほぼ全土に電力が行き渡ることになる。それに加え、ラオスや他の近隣国を結ぶ送電線の拡張も2016年に完成が見込まれる。
送電線拡張計画
番号 |
プロジェクト名 |
距離(Km) |
完成予定 |
1 |
115kV, Takeo-Kampot (1 substation: Kampot) |
74 |
2012 |
2 |
230kV, Phnom Penh – Kampong Chhnang – Pursat –Battambang
(3 substations: Kampong Chhnang, Pursat, Battambang ) |
302 |
2012 |
3 |
230kV, Pursat – Osom
(1 substation: Osom commune in Pursat Province) |
175 |
2012 |
4 |
230kV, Phnom Penh – Kampong Cham |
110 |
2013 |
5 |
230kV, Kampot – Sihanouk province
(2 substations: Vealrinh, Sihanouk province) |
80 |
2013 |
6 |
115kV, Stung Atay Hydro – Osom substation |
10 |
2013 |
7 |
230kV, Stung Treng – Lao PDR ( 1 substation: Stung Treng) |
56 |
2014 |
8 |
230kV, Kampong Cham – Kratie |
110 |
2015 |
9 |
230kV, Kratie – Stung Treng |
126 |
2015 |
10 |
230kV, Osom substation – Stung Russei Chrum Hydro (upper station) |
32 |
2015 |
11 |
230kV, Stung Russei Chrum Hydro (upper station) – Stung Russei Chrum Hydro (lower station) |
10 |
2015 |
12 |
230kV, Stung Russei Chrum Hydro (upper station) – Stung Tatay Hydro Power |
37 |
2015 |
13 |
230kV, Phnom Penh – Sihanouk province (along national road No.4) |
220 |
2016 |
14 |
230kV, Stung Atay Hydro – Stung Chay Areng Hydro |
32 |
2017 |
15 |
230kV, Stung Chay Areng Hydro – North Phnom Penh (NPP) substation |
145 |
2017 |
16 |
230kV, Phnom Penh – Neakleung – Svay Rieng
(2 substations: Neakleung, Svay Rieng) |
120 |
2018 |
17 |
230kV, Kampong Cham – Kampong Thom – Siem Reap
(1 substation: Kampong Thom) |
250 |
2019 |
合計 |
1,889 |
出所:鉱工業・エネルギー省
ベトナムとの電力協力協定は1999年6月10日に締結され、さらに電力購入契約も2001年に締結されている。電力購入契約は5年ごとに更新される予定である。2002年以降EDCはベトナムの電力会社(PC2)から電力を輸入してバベット(スバイリエン州)、メモット(コンポンチャム州)、ポンヘクレック(コンポンチャム州)等に供給してきている。プノンペンへの電力供給を確保するために、200MWの電力購入契約がベトナムとの間で締結され、プノンペン/タケオ/ベトナムを結ぶ220kVの送電線の工事も終了している。この購入契約の下で、一日当たり300MWを必要とするプノンペンに対し、120MWがベトナムから送電され始めている。更に50MWが上乗せされ、契約量200MWのうち合計170MWが送電されることになっているが、最近のベトナムにおける電気不足によって依然として実現されていない。
電力購入契約は当初2002年にタイとの間で締結され、2007年に改訂されている。現在カンボジアとタイとの間の電力は22kVと115kVで送電されている。タイのトラット県との間で結ばれた契約により、22kVの送電線を通してカンボジア側のコーコンとポイペトに電力が供給されている。2007年11月からは115kVの送電線を通して、タイのアラン・プラット変電所から電力輸入が始まり、バッタンバン、シェムリアップ等に供給されている。
ラオスとの電力協力協定は1999年に締結され、ラオス南部とカンボジアのスタントレンとの間の115kV送電線による電力供給で合意した。送電線の建設は2016年に完成予定である。
村落の電化はカンボジアにとって大きな問題の一つである。村落電化に関するカンボジアの戦略は、2003年に作成された「再生可能エネルギー行動計画(Renewable Energy Action Plan:REAP)」と2008年に作成された「カンボジア・エネルギー分野戦略(Cambodia Energy Sector Strategy:CESS)」に基づき計画されている。また村落電化基金(Rural Electrification Fund: REF)が2004年に設立されている。同計画に基づき、モンドルキリ州においては2基の370KWの小水力発電所が建設され、予備の300KWのディーゼル発電機とともに地方都市への電力供給を始めている。
3. 電力料金
主な都市と州の電力料金は、トップ・ページの「投資環境」のなかの「ビジネス・コスト」に掲載しています。