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知的財産権

1.  知的財産権(知財権)の保護に関する法制度

 

カンボジアは1995年に「世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization:WIPO)」の加盟国となり、1998年にはパリ条約に加盟しているが、知財権保護に関する法的枠組みは長期間にわたり十分ではなかった。しかしながら、今世紀に入りカンボジア政府は知財権に関する一連の法制整備に努力を重ねてきており、その知財権保護に関する法制度は大きな進歩を遂げると共に、WTO加盟時の義務履行を果たしてきている。今までに制定された知財保護に関する法律には下記のものがある。

・      2002年「商標・名称・不公正競争に関する法律(Law on Marks, Trade Names and Acts of Unfair Competition)」

・      2003年「著作権及び関連する権利に関する法律(Law on the Copyright and Related Rights)」

・      2003年「特許、実用新案、工業に関するデザイン法(Law on the Patents, Utility Model Certificates and Industrial Design)」

・      2008年「畜産家の権利及び植物種の保護に関する法律(Law on Breeder Rights and Plant varieties Protection)」

 

さらに次のような法律の制定に向けて政府は努力を重ねているところである。

・      「非公開情報と取引機密の保護に関する法律(Law on the Protection of Undisclosed Information and Trade Secret)」

・      「IC配列設計の保護に関する法律(Law on the Protection of Layout Design of IC)」

・      「地理表示の保護に関する法律(Law on the Protection of Geographical Indications)」

 

2.  商標及び名称(Trade marks and names)

 

2002年の「商標、名称、不公正競争に関する法律(Law on Marks, Trade Names and Acts of Unfair Competition)」は知財権を保護するカンボジアで初めての法律である。商標に対する排他的権利は登記によって取得することができ(第3条)、商標登記の先順位権は、申請者またはその先順位者がパリ条約に加盟するいずれかの国で、先順位により既に国内・地域的な申請を行なっている旨の宣言書を登記申請書に添付することにより認められると規定している(第6条)。同法は、登記手続き、無効及び除去、集団的な商標、商標・名称のライセンス供与、権利侵害と救済、国境条項、所有権譲渡・変更等につき規定している。

 

カンボジアの商標法は国内使用のみに関する認定を行なうため、輸入や流通に関する権利保有者の排他的権利は常に保護され、また委任状や流通契約によって排他的流通業者を指定することができる。

 

3.  著作権(Copyright)

 

2003年の「著作権及び関連する権利に関する法律(Law on the Copyright and Related Rights)」は、文化的な製作物の適正かつ正しい利用を保証するために、著者及び演奏者に著作物に関する権利を与えることによって、文学、文化的演技の著作、演技者、音楽制作者の業績や放送機関を通じた放送内容を保護することを目的にしている(第1条)。

 

同法により保護される製作物は以下の通りである(第3条)。

・      カンボジア国民でカンボジアに定住する著者の作品

・      海外で最初に出版され、その後30日以内にカンボジアで出版される作品を含む、カンボジアで最初に出版される作品

・      主たる事務所や定住する住居をカンボジアに有する製作者の視聴覚作品

・      カンボジアで建設された建築物及びカンボジアに所在する建築物等に付属するその他の芸術品

・      国際条約でカンボジアが保護する義務を有することが定められている作品

 

次のような対象物も同法により保護されている(第7条)。

・      全ての書籍及びその他の文学的、芸術的、科学的、教育的文書

・      講演、演説、説教、口頭または書面による弁論及び同質の特質を有するその他の作品

・      演劇及びミュージカル

・      言語を含むと含まないとに拘わらず、全ての作曲作品

・      視聴覚的作品

・      絵画、彫刻及びその他のコラージュ

・      写真及び建築物

・      コンピューター・プログラム及びプログラムに関連する設計図書等

 

著者はその作品に関する、全ての人に対抗することができる排他的な権利を有しており、その権利には倫理的権利、経済的権利が含まれる(第18条)。著者の倫理的権利は永久的なものであり譲渡することは出来ず、また差し押さえることもできず時効にもかからない(第19条)。

 

著者の経済的権利は、複製の許諾、公衆への伝播、派生作品の製作等を通じて、自身の作品を使用することができる排他的権利である(第21条)。経済的権利の保護は、作品制作の日に始まり、著者の死後50年間存続する(第30条)。

 

経済的な紛争が生じた場合の法の適用を容易にし、著作権の証拠とするために、著者または著作権者は文化・芸術省にその作品を供託したり、登録することができる。登録した場合には文化・芸術省は登録証明書を発行する(第38、39及び40条)。

 

著作者や著作権者は自らの権利を守り運用するために、文化・芸術省の許可を受けて、集団的運用機構を設立することができる(第56条)。

 

4.  特許、実用新案及び工業意匠

 

「特許、実用新案、工業意匠に関する法律(Law on the Patents, Utility Model Certificates and Industrial Design)」は2003年1月22日に制定され、カンボジアにおける許諾済み特許、実用新案及び工業デザインに対する保護を与えている(第1条)。

 

同法の目的は次の通りである(第2条)。

・      革新と科学的・技術的調査・開発を奨励する

・      国内外の商業と投資の増大を刺激し促進する

・      製造活動と経済開発を促進するためにカンボジアへの技術移転を奨励する

・      工業所有権の保護し、権利侵害や違法な商行為に対抗する

 

特許(Patents

「特許」とは発明を保護するために与えられる権利を指し、「発明」とは技術的分野における科学的問題に対する解決方法を提供する発明者のアイデアを言う。発明は製品・方法、ないしはそれらに関連するものである(第4条)。発明は、それが新しく、画期的な段階を経るものであり、工業的に応用可能な場合において特許を許諾される(第5条)。

 

特許に対する権利は発明者に帰属し(第10条)、特許申請は工業担当省(工鉱業・エネルギー省: Ministry of Industry, Mines and Energy)に対して行ない、申請料の支払いが必要である(第16条)。

 

登記官が特許を許諾した場合には、次のような手続きがとられる(第39条)。

・      特許許諾情報の出版

・      申請者に対しての特許許諾証明書と特許コピーの発行

・      特許の記録

・      公衆に対する特許コピーの提供

 

特許は申請登記の日から20年後に失効し、特許や特許申請を保持するには、登記官に対して毎年前払いで年間費用を支払う必要がある(第45条及び46条)。

 

実用新案証明(Utility Model Certificates

・      実用新案証明は、新規で工業的に応用可能であり、かつ製品・方法もしくはそれらに関連する実用新案の保護のために供与されるものである(第69条)。画期的な段階を経ない発明においては、実用新案証明が妥当であるかもしれない(第71条)。

・      実用新案証明は、申請登記の日から7年目の年末に失効し、更新はできない(第73条)。

・      特許の許諾ないしは拒絶以前においては、1度に限り、特許申請者は何時でもその申請を実用新案証明への申請に変更可能であり、またその逆も可能である(第75条及び76条)。

 

工業意匠(Industrial Design

同法によれば、線、色、三面体のどのような組み合わせ、またはどのような材質であっても、工業製品や手工芸品に特別な外観を与え、それらの意匠となる場合には、工業意匠と見做され(第89条)、それが新しい場合には登記することが出来る(第91条)。

 

登記申請日または先願日以前の12ヶ月間に、世界のどこでも未だ公衆に対して公開されていない場合に「新規」であると見做される(第92条)。

 

工業意匠の登記申請は工鉱業・エネルギー省で行い、申請料の支払いが必要である(第95条)。登録所有者以外の人間による、登録工業意匠による物品のカンボジアでの製造・販売・輸入には、登録所有者の合意が必要である(第105条及び106条)。工業意匠の登記は登記申請日から5年間有効であり、さらに5年間ずつ2回にわたり更新可能である(第109条)。

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